リース税制

 リース取引についてまとめました。法人税法上も通常のリース取引と呼ばれている取引はすべて売買処理することになっています。その処理についてポイントをまとめました。 

リース取引は売買取引処理に

 法人税法で、リース取引は、売買取引とみなすと規定され(法64の2)、通常のリース取引と呼ばれている取引はすべて売買処理することになりました。今までは、所有権移転ファイナンス・リース取引は売買処理が行われ、所有権移転外ファイナンス・リース取引は賃貸借処理されることがほとんどでしたが、所有権移転外ファイナンス・リース取引も売買処理をすることとなったわけです。

中小企業の対応について

法人税と会計基準で処理の差異がありますが、会計基準に従った処理をした場合、申告調整が必要となります。また、会計基準の規定は将来のキャッシュフローを現在割引価値に引き直したりする考え方が導入されているので、処理も複雑で中小企業にとっては対応が大変です。したがって、中小企業の場合、法人税の規定に従った処理が行われる場合が多いものと思われます。法人税の規定を正確に理解して、それに従った処理ができるようになることが重要です。そこで、以上のような観点から、法人税の規定に従った処理のポイントについてまとめました。

リース取引の意義

法人税法上のリース取引の意義

 法人税法上の「リース取引」とは、①中途解約不能と②フルペイアウトの要件を満たすリース取引をいいます。

中途解約不能の意義

 資産の賃貸借に係る契約に解約禁止条項がない場合でも、賃借人が契約違反をした場合又は解約をする場合、賃借人が、未経過期間に対応するリース料の額の合計額のおおむね全部(原則として100分の90以上)を実質的に支払う場合は、中途解約不能に準ずるものと判断されます。

フルペイアウトの判断基準

 税務上のフルペイアウトの定義は「賃借人がその賃貸借に係る資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、その資産の使用に伴って生じる費用を実質的に負担すべきこととされているもの」とされています。そして、フルペイアウトの判断基準としては、「リース期間に賃借人が支払う賃借料の金額の合計額が、その資産の取得のために通常要する価額の概ね90%を超える場合には、資産の使用に伴って生ずる費用を実質的に負担するべきこととされている場合に該当する」としています。

リース資産の取得原価

賃借人におけるリース資産の取得原価は、原則としてそのリース期間に支払うべきリース料の額の合計額によることとなりました(法基7-6の2-9)。ただし、リース料の額の合計額のうち利息相当額から成る部分の金額を合理的に区分することができる場合には、当該リース料の額の合計額から当該利息相当額を控除した金額を当該リース資産の取得原価とすることができます。その他の注意点としては、リース資産を事業の用に供するために賃借人が支出する付随費用の額は、リース資産の取得原価に含まれます。リース取引に係る「残価保証額」については、法人税法上は、リース資産の取得原価から除くこととされています。
(原則的処理)
 (借)リース資産 ◯◯◯ (貸)リース債務 ◯◯◯
(例外的処理:利息部分を区分した場合)
 (借)リース資産 ◯◯◯ (貸)リース債務 ◯◯◯
長期前払費用◯◯◯

残価保証のある場合の処理

 残価保証とは、リース期間の終了時に、リース資産の処分価額が、あらかじめリース契約において定められた保証額に満たない場合に、その満たない部分の金額を支払うこととされている場合の保証額をいいます。この残価保証額は、法人税法上は、リース資産の取得金額から除くこととされています。消費税法上も、残価保証額は消費税の課税の対象金額(課税資産の譲渡等の対価の額)には含まれないので注意が必要です。

再リース料の処理方法

 再リース料の額は、原則として、リース資産の取得原価に算入しないこととされています。ただし、再リースをすることが明らかな場合には、当該再リース料の額は、リース資産の取得価額に含まれることになっています。

利息費用の処理方法

 リース料の額の合計額をリース資産の取得原価とするのが原則ですが、リース料の額の合計額のうち利息相当額から成る部分の金額を合理的に区分することができる場合には、当該リース料の額の合計額から当該利息相当額を控除した金額を当該リース資産の取得原価とし、当該利息相当額はリース期間の経過に応じて利息法又は定額法により損金の額に算入することができます。 

減価償却方法

リース資産の減価償却方法は、リース期間を償却期間とする定額法(リース期間定額法)になります。なお、賃借人が賃借料として経理した場合でも償却費として取り扱われます。

リース取引の消費税の取り扱い 

リース資産の消費税の取り扱いについては、法人税同様に売買に準じた処理を行うこととされ、引き渡し時点で譲渡があったこととになります。(消基5-1-9(1))ただし、法人税の処理と同様に、残価保証額は消費税の課税の対象金額(課税資産の譲渡等の対価の額)には含まれないので注意が必要です。

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