決算書を経営に活かしていますか

決算書は経営状態を把握し、今後の経営方針を考える上で重要な資料です。決算書を上手に分析し、それを経営に活かしていますか。ぜひ、決算書を上手に経営に活かしていけるように、経営者の皆さんに持っていてほしい決算書分析の重要な視点について書いていこうと思います。

利益情報について

決算書からどのような情報を読み取ることができ、その情報をどのように活用すすことができるのかについて考えていきます。
 まず、決算書から損益(儲け)についての情報をどのように分析していくことができるかを見ていきます。
 利益は「利益=収益(売上)-費用」で計算されますが、この費用を「売上に比例して増えていく費用(変動費)」「売上に関係なく発生する費用(固定費)」に分解していくと、「利益=収益(売上)-変動費(売上の一定割合)-固定費(一定金額)」となり、売上高に対する費用の発生金額が計算でき、売上が増減したときに利益がどのようなるのかを予測できるようになります。利益がトントンとなる売上高も計算をすることによって求めることができます。この分析方法をCVP分析とか損益分岐点分析とか言います。(詳しくは、「計画的に経営をするために」のコラムを見てください。)売上に対応する利益が予測できると、発生する税金も事前に予測できるようになり、計画性のある経営を行うことが可能になってきます。

変動費は業務活動費用、固定費はキャパシティーコスト

ここで、変動費と固定費について、もう少し詳しく説明したいと思います。
 変動費は、販売行為と生産行為に伴って発生する費用であり、販売行為や生産行為がなければ発生しない費用です。それに対して、固定費は販売行為や生産行為を行っても行わなくても、一定の販売能力・生産能力を維持しようとする限り、販売行為や生産行為とは無関係に発生する費用です。
 具体的に説明してみたいと思います。販売するために、事務所を借りれば家賃が発生し、人を雇えば人件費が発生します。生産をするために設備を保有すれば、減価償却費や賃借料などが発生します。ここにあげた費用は一度設定してしまうと、販売行為を行っても行わなくても発生してしまう費用であり、販売能力や生産能力を維持していくための費用なのです。固定費は、このように能力維持のための費用で、キャパシティ・コストであるといわれます。

固定費の設定が適正かどうかの検討が必要

このように固定費は必ず一度設定してしまうと一定額発生してしまう費用なので、限界利益(=売上高-変動費)で回収しなければならない費用ということになります。そして、固定費と限界利益が一致し損益がトントンになる売上高を損益分岐売上高といいます。
 固定費は限界利益(=売上高-変動費)で回収しなければなりませんが、いくら売上げをあげても損益分岐点にいたることができない利益構造になっている場合があります。その場合には、大胆な見直しが必要になります。
 また、売上の変動が激しい事業の場合には、忙しくない時の生産能力のみを自社で維持し、忙しい時期には外注で対応することで、固定費を削減する方が望ましかったりします。固定費を変動費化することで事業上のリクスを回避できる場合もあります。
 企業は悪いときでもトントンで、調子が良いときは利益が出るような儲かるしくみを作ることが大切ですが、経営戦略上も費用を固定費と変動費に分類し、企業の費用の構造をどうしていくべきかを検討することは重要です。
 全ての受注を自社でやることにこだわりすぎて、固定費が異常に多くなり、損益分岐点をなかなか越えることができない利益構造にしてしまう場合もあるように思います。赤字にならないようにバランスのいい事業を展開できるようにしていく工夫が重要です。 

事業別損益計算・店舗別損益計算・商品別損益計算の必要性

次に、細かい損益計算の管理の必要性について考えていきましょう。
 売上に対する費用の発生の態様は、事業が異なっていたりすると違ってくるので、事業別に損益をだして、それぞれの事業ごとに利益が出ているか、利益が出にくい体質になっていないかの分析をする必要があります。
 また、経営の責任単位ごとに損益を出すことも重要です。特に赤字になっている場合には、その原因を追求しなければなりませんが、店舗ごとの損益計算を行わなければ、どの店舗に原因があるのかを追求していくことができません。
 さらに、商品別の損益を把握しておき、儲かる商品が売れているか、商品の値付けが間違っていないか気をつけることも必要です。売上高のみを追いかけていると儲からない商品のみが売れてしまい、それが原因で赤字になっていたりします。ですから、商品別の分析も大切です。
 以上のように、企業が利益を追求していくためには、事業別損益計算・店舗別損益計算・商品別損益計算などのある程度の細かい管理は必要なのです。(詳しくは、「売上のみを追求するとなぜ失敗するのか」のコラムを見てください。)

少ない資金(資本)で、最大の利益を上げているか(資本利益率)

次に、収益性についての分析について見ていきましょう。どのような事業が経営分析を行う場合、良い事業とされるのかというと、少ない資金(資本)で最大の利益を上げることができる事業が、最も良い事業であると考えます。そして、その判断の基準のことを資本利益率(営業利益÷総資本)と言います。この資本利益率の大きい企業が資金(資本)を有効活用し、少ない資金(資本)で最大の利益を上げている企業であると判断されるのです。
 そして、この資本利益率は、資本回転率と売上高利益率に分解することができます。資本を効率に使用して利益を出していることの原因をさらに細かく分析していくのです。

         営業利益    売上高    営業利益
 資本利益率= ----- = ----- × -----
         総資本     総資本    売上高
               (資本回転率)(売上高利益率)

          総資本     売掛債権    在  庫
 資本回転期間=-------=-------+-------+…
         売上高(月額)売上高(月額) 売上高(月額)
              (売掛債権回転期間)(在庫回転期間)

         営業利益     売上高 - 売上原価 - 販管費
 売上高利益率=------ = -----------------
         売上高            売上高

                 売上原価      販管費
          = 1 - ------ - ------
                  売上高       売上高
                 (原価率)  (売上高販管費率)

 まず、資本回転率ですが、資本回転率とは、売上高が資本に対して大きいのか小さいのかをみる比率です。資本が有効活用されて、少ない資本で最大の売上高を上げることができているかの指標です。この資本回転率の逆数は資本回転期間といい、実務では資本回転期間をさらに売掛債権回転期間、在庫回転期間などに細分化して、営業上の各資産が売上高に対して過剰になっていないのか、適正な金額であるのかを分析していきます。
 たとえば、売掛債権の場合、通常の回収期間が2ヶ月であるのに、売掛債権が2ヶ月を大きく超えて存在していれば、不良債権が多く存在している可能性が高いと判断されます。このような企業の場合、債権管理の方法の見直しも必要かもしれません。
 次に、売上高利益率ですが、売上高利益率は、営業利益の売上高に対する比率のことです。売上高利益率が高いということは、少ない売り上げでたくさんの利益を上げることができ、付加価値の高い商品を販売していることを意味することになります。この売上高利益率は、原価率、売上高販管費比率などに細分化され、売上高販管費比率はさらに売上高人件費率、売上高運賃費率などに細分化して、営業上の各費用が売上高に対して過剰になっていないのか、適正な金額であるのかの分析が行われます。(同業者の平均値との対比、予算との対比、自社の前年度との対比で検討します。)

債権管理、在庫管理の重要性

少ない資金を有効に活用し、資本利益率を向上させていくには、債権管理や在庫管理も重要であることについて少し書いていこうと思います。債権管理や在庫管理が悪いと、債権や在庫が異常に増加してしまいます。それは資金が債権や在庫になってしまう事です。資金がなくなってしまうので、追加の借り入れが必要になります。借入金が増加すれば金利負担も増加していきます。さらに、債権管理や在庫管理が悪いと、不良債権や不良在庫が発生しやすくなり、損益悪化やさらなる資金繰り悪化の原因にもなります。債権管理や在庫管理はいろいろな意味でとても重要な業務なのです。
 最後に、資本利益率についてまとめてみようと思います。資本利益率を向上させるということは、付加価値の高い商品を販売するとともに、無駄な資産や無駄な費用をなくし、売上にみあう適正な資産と費用にしていくことです。そのためには、債権管理、在庫管理などの業務も重要になってきます。経営の基本は、少ない資本で最大の利益を出すことです。付加価値の高い商品を開発し売る努力と、無駄な資産を持たず、必要最小限の経費で、事業を行うことを心がけていけば、利益がでて、資金繰りも良くなっていきます。

余裕のある経営ができているか(生産性分析:一人当たり付加価値)

企業の良し悪しを判断する基準として収益性の分析も大切ですが、もうひとつ事業の良し悪しを判断する基準として意識してほしい基準があります。それは、企業の生産性の基準であり、一人当たりの付加価値です。今からその内容について説明していきます。

付加価値とは何か。

 まず、付加価値について説明したいと思います。付加価値は企業が新たに生み出した価値であり、売上高から外部購入価値を差し引いた金額です。また、企業が生み出した付加価値は、従業員、出資者、賃貸人、企業自体等に分配されることになるので、付加価値は分配される内容の合計としても表現することができ、以下のような算式になります。(外部購入価値の内容は、仕入商品、材料費、外注工賃などになります。)

売上高 
外部購入価値  付加価値
 外部購入価値 人件費支払
利息 
地代
家賃 
租税
公課 
 配当内部
留保 

   付加価値=売上高-外部購入価値
         =売上高-(仕入商品+材料費+外注工賃+消耗品費など)
         =人件費+支払利息+地代家賃+租税公課+配当金
           +内部留保(減価償却+税引後利益-配当金)

なぜ、労働生産性が重要か

 付加価値が理解できたところで、次に労働生産性について考えていきましょう。労働生産性は、人員当たりの生産効率の事であり、労働生産性の重要な指標が従業員一人当たりの付加価値です。この一人当たりの付加価値が多いということは、従業員に給与を払う原資が多いということであり、企業に関わる様々な分配先に対して、余裕のある分配ができることを意味しているのです。ですから、余裕のある企業を育てていくためにも、一人当たりの付加価値の高い企業を目指して行くことが望ましいと思います。

                付加価値
   一人当たりの付加価値= ------ 
                従業員数

資金情報について(1)(資金のフロー情報)

次に、資金情報を決算書からどのように読み取り、それを活かしていくかについて考えていきます。資金の情報は、損益計算書と貸借対照表の動きを見ることによって、ある程度把握することができます。キャッシュフロー計算書を作成している企業の場合には、キャッシュフロー計算書、損益計算書 、貸借対照表の動きを見ることによって、資金の動きを正確につかむことができます。企業にとって資金ほど大切なものはないですから、決算書から資金について情報を読み取り、それを経営に活かしていくことほど重要なことはありません。
資金を考える上で重要な公式をまず示したいと思います。

資金繰りの公式

税引き後利益+減価償却費>借入金返済+設備投資

売上高

210億円
売上原価・費用
180億円
減価償却費
20億円
法人税等
4.5億円
税引後利益
5.5億円

 資金繰りの公式は、この公式に従って資金の計画を立てていくことで、資金が減少することなく(資金が増加し)、健全な資金の運用ができる公式で、この式の意味は経営者は理解できていなければならないものです。この資金繰りの公式の意味について今から説明していこうと思います。
 資金繰りの公式の左辺「税引き後利益+減価償却費」は営業活動で残る資金の金額を表しているのですが、そのことを上の表を見ながら理解していきましょう。(単純化のため、掛けの取引はないと仮定)
 上の表はある会社の1年間の損益を表にしたものです。収入は売上高の210億円、支出した売上原価・費用は180億円、減価償却費は20億円だったとします。この会社の場合、税金を払う前のこの段階で30億円(210億円-180億円)の資金が会社に残っています。
 減価償却は、単価30万円以上の設備を購入した場合に使用できる期間に渡って費用計上するものです。以前の事業年度で支出したもので、その事業年度では支出しなかったが、経費計上できるものと考えてください。ですから、減価償却費はお金が出ていっていませんが費用計上できるので、税金の課税対象にならず税負担なしでお金が残る部分になります。
 税金について見ていきます。会計上の税引き前利益は210億円-180億円-20億円=10億円になります。45%の税率で課税されたとすると4.5億円の法人税等が発生します。税引き後利益は5.5億円になります。
 企業に残る資金について見ていきましょう。収入は210億円で、支出されたのは売上原価・費用の180億円と法人税等の4.5億円ため、210億円-180億円-4.5億円=25.5億円が企業に残る資金になります。この金額は、「税引き後利益+減価償却費」の金額と同じになります。(20億円+5.5億円=25.5億円)(黄色部分が企業に残る資金の部分になります。)
 営業活動で企業に残る資金は「税引き後利益+減価償却費」がベースになるここがわかっていただけたでしょうか。
 この「税引き後利益+減価償却費」の金額の枠内で借入金の返済や設備投資をまかなえば、資金は減少せず、増加していくのです。そのことを表した式が以下の式です。 この資金繰りの公式を守ることによって、健全な経営をしていくことができます。経営者は資金計画もしっかり立てながら経営を行っていかなければいけないので、この式の意味ぐらいは理解できておかなければいけないと思います。

税引き後利益+減価償却費>借入金返済+設備投資

企業の成長に伴って資金も必要になる

ここまでの話は、掛け取引のないことを前提にすすめてきましたが、成長している企業では、成長に伴って運転資金も増加するようになっていきます。先ほどの資金繰りの公式も以下のように修正することになります。

税引き後利益+減価償却費>借入金返済+設備投資+運転資金の増加

運転資金=売掛金+受取手形+在庫-買掛金-未払金

この式の意味を説明しようと思います。企業が成長していけば、売掛金(掛けで売った代金)も増えていきますし、在庫も増えていきます。現金預金が売掛金や在庫になってしまう(在庫を買えばその分のお金はなくなっています)のです。その分の資金を内部留保(「税引後利益+減価償却費」による資金の蓄積)で作らないならば、借入しなければなりません。したがって、運転資金の増加も「税引後利益+減価償却費」でまかなっていくことが望ましいので、この式では運転資金の増加が右辺に追加されています。

資金繰りを良くするために

今までの内容を基に資金繰りを良くしていくにはどうしたらよいのかについて考えていこうと思います。
①税引き後利益を増やすことで、内部留保による自己資金を増やしていく。
  (役員報酬で得た資金を会社に貸付けても良いでしょう。)
②売掛債権の管理を行い、不良債権の発生を抑える。
③在庫管理を行い、適正在庫を維持することと不良在庫の発生を抑えることで、資金が過剰に在庫にならないようにする。
④「税引き後利益+減価償却費>借入金返済+設備投資+運転資金の増加」のルールを守った健全な資金計画を立てる。
⑤売掛債権の入金後、支払債務の支払期限を設定できると、運転資金が節約できます。
⑥経営の基本は、少ない資本で最大の利益を出すことです。無駄な資産を持たず、必要最小限の経費で、事業を行うことを心がけていけば、資金繰りは良くなっていきます。

資金情報について(2)(資金のストック情報)

 ここまでは、資金のフロー(資金の増加減少)の情報について扱ってきましたが、資金のストックの情報についてもここで触れていこうとおもいます。
 貸借対照表は左側が資金の運用で、右側が資金の調達を意味しています。そして、資金の調達と運用のバランスが取れている事が望ましいのですが、貸借対象表上の財務バランスを見る重要な指標としては、以下のものがあります。

①自己資本比率(=自己資本÷総資本(総資産))
 自己資本比率が高いということは、借入金に頼らない経営をしていることを意味します。中小企業の場合には、役員からの借入金は自己資本とみなして計算する方が実情に適しています。比率が大きいほど望ましいといえます。
②固定比率(=固定資産÷自己資本)
 固定資産が自己資金でまかなわれているかを見る比率です。100%以下なら健全な財務諸表といえます。比率が小さいほどよい。
③長期固定適合率(=固定資産÷(自己資本+固定負債))
 固定資産が自己資金と固定負債でまかなわれているかを見る比率です。100%以下が望ましいです。比率が小さいほどよい。
③借入金返済可能年数(=借入金÷税引後利益)
 5年以内が望ましい。とにかく、借入金を多くし過ぎないことです。
④借入金対売上高比率(=借入金÷売上高)
 20%以内が望ましく、 40%を超えると危険信号です。

決算書を経営に活かしたいと思っている経営者の皆さんへ

 決算書を経営に活かしていくためには、ある程度細かい管理をしなければならない部分が出てきたりします。経営に役立つ情報をあまり手間をかけずに入手し経営に活かしていく工夫が大切です。当税理士事務所では、お客様が決算書の情報を経営に活かせるようにするにはどうしたらいいのかを常に考えてきました。今まで決算書を経営に活かしきれていなかったが、今後は活かしていきたいと思っている経営者の皆さん、最初の1回目の相談については無料で行っているので、気楽にご相談ください。

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