法人を設立するなら合同会社か株式会社か

各法人の特徴

 会社を設立する際には、どの種類の法人を設立するかの検討も行わなければなりません。営利活動を行う法人の場合、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社の設立が考えられますが、各法人の特徴を以下にまとめました。

項  目合名会社合資会社合同会社株式会社
会社種類持分会社(出資者(社員)が経営を行うため、内部関係の定款自治が広く認められ、機関規制がない)持分会社(出資者(社員)が経営を行うため、内部関係の定款自治が広く認められ、機関規制がない)持分会社(出資者(社員)が経営を行うため、内部関係の定款自治が広く認められ、機関規制がない)株式会社(所有と経営の分離がされているので、取締役を置き機関規制が有る)
所有と経営の分離の有無所有と経営の一体化
(出資者(社員)が経営)
所有と経営の一体化
(出資者(社員)が経営)
所有と経営の一体化
(出資者(社員)が経営)
所有と経営の分離
(取締役の設置)
出資者(社員・株主)の責任無限責任社員のみ無限責任社員、有限責任社員有限責任社員のみ有限責任社員のみ
最低登録免許税の金額60,000円60,000円最低60,000円(資本金額の7/1,000円)最低150,000円(資本金額の7/1,000円)
持分の譲渡他の社員全員の一致が必要他の社員全員の一致が必要他の社員全員の一致が必要基本的に株式譲渡自由の原則
出資資金回収方法退会による出資の払戻退会による出資の払戻退会による出資の払戻株式譲渡
役員(取締役等)の任期なしなしなし原則2年(非公開会社は10年以内)
備  考大きい法人で信用があるように見える

持分会社と株式会社の相違

 持分会社は所有と経営の分離がなされていない法人で、出資者である社員が経営を行う法人です。株式会社は出資者(社員)である株主が株主総会で経営者である取締役を選任し、所有と経営の分離が行われている法人です。現在は取締役1人だけの株式会社も設立できます。また、以前の株式会社と同様に監査役、3人の取締役、取締役会を設置してチェック機能を強化するように機関設計をすることもでますし、監査役会、会計監査役を設置してチェック機能をさらに強化するなどの機関設計もできるようになっています。株式会社は所有と経営の分離がなされており、持分会社よりも株式会社の方が大きくて信用があるイメージがあるように思います。

 持分会社の特徴としては、所有と経営の分離がされておらず出資者(社員)が経営を行うため、内部関係(配当方法など)について定款自治が広く認められている点があげられます。また、出資者である社員が経営を行うため、株式会社のように2年に一度(非公開会社の場合10年以内に一度(定款で定める))取締役の改選を行い登記を行う必要もありません。

各会社の責任について

 各会社の責任について見ていきます。以前は持分会社(合同会社・合資会社)は無限責任社員がいて、最終的に法人の責任を出資者である無限責任社員が責任をとることになっていました。人的会社とも呼ばれていました。

 一方、株式会社は出資者である株主は有限責任で、出資した分については責任を負うけれども、株主はそれ以上の責任を負わないことになっています。その代わり出資(法人財産)について厳しい規制が有り、物的会社とも呼ばれていました。

 以前は持分会社については、合名会社にも合資会社にも無限責任社員がいなければならなかったため、法人設立を行う際にあまり選択されていませんでした。

 しかし、会社法の改正により、持分会社においても有限責任社員だけの法人が認められ合同会社の設立ができるようになりました。合同会社は株式会社と同様に社員(出資者)の責任が出資した金額に限定されていて有限責任です。したがって、合同会社と株式会社のどちらの法人の設立をするのかの検討をされる方が多くなったように思います。

登録免許税について

 登記を行う際の費用については、持分会社の設立の登録免許税は60,000円(合同会社の設立の登録免許税は最低60,000円で資本金額の7/1,000円)、株式会社の登録免許税は最低150,000円で資本金額の7/1,000円となっています。登録免許税については、株式会社よりも合同会社を設立した方が安く済みます。 

小規模会社の設立なら合同会社の検討も

 家族経営で法人を設立する場合など小規模な法人を設立するケースでは、出資者(社員)の責任が有限責任であり、登録免許税(登記費用)が60,000円ですみ、役員の改選を定期的に行い登記を行う必要がないことなどから株式会社ではなく合同会社の設立を選択される方も多くなっているように思います。株式会社の方が信用があるように見えるので、株式会社を選ぶ方もいます。この辺の検討はしっかりされることが重要だと思います。

株式会社を設立する際の工夫

 株式会社を設立する場合には、取締役会を設置せず非公開会社(株式譲渡制限会社)にすると以下のメリットがあるので、一度検討すると良いでしょう。
①以前の有限会社の様に、取締役1人だけの簡単な機関構成の株式会社にすることができる。
②取締役の改選を10年ごとにすることができる。